家庭教育

高校で不登校になったその後の実話。家庭教育が子どもを変える

高校で不登校になったその後の実話。家庭教育が子どもを変える

高校で不登校になると、小・中学校のように義務教育ではない分、単位取得や進学がよりシビアで大変ですよね。

家庭教育推進協会でも日々不登校の高校生の親御さんのカウンセリングもしていますが、特に以下のような心配をされている親御さんが多いです。

  • 高校で不登校になったら、その後の進路はどうなるのだろう?
  • 高校を卒業しないと進学・就職できない?
  • 高校の勉強をしていないと、就職してから苦労する?

進路や就職はお子さんの人生を大きく左右する出来事ですから、心配されるのももっともです。

そのような質問に、今回はお答えしていこうと思います。

高校で不登校になったらその後はどうなる?

不登校の男子高校生

以前ご相談頂いた親御さんで、「今のうちは《不登校》ですが、高校を退学・卒業したら息子は《引きこもり》と呼ばれてしまう。それだけは絶対に避けたいんです」と涙ながらに仰る方がいました。

2022年から日本の成人年齢も18歳となり、高校を卒業する頃にはれっきとした大人です。進学なり就職なりしてなんとか自立してほしいというのが親の願いではないでしょうか。

不登校の子が、高校卒業後にどのような進路を歩むのか見ていきましょう。

進路は色々

不登校から再登校できた女子中学生

日本中で不登校の生徒は年々右肩上がりに増加し、もはや不登校は珍しいものではなくなっています。そして、実は不登校でも色々な進路がありますよ!

不登校の高校生の進路例
  • 学校復帰
  • 転校/別の高校入学(通信制高校など)
  • 中退
  • 高卒認定試験受験
  • 大学進学
  • 就職

では実際にどれくらいの生徒が進学・就職しているかというと、文部科学省の平成23年に「不登校の実態調査」の統計調査が参考になります。これは中学3年時に不登校だった子が5年後の20歳時点での進学・就職状況をヒアリングしたもので、以下のような結果になっています。

不登校の中学3年生の20歳時点の進路
  • 就業のみ 34.5%
  • 就学のみ 27.8%
  • 就学・就業 19.6%
  • 非就学・非就業18.1%

この統計を見ると、中学3年時点で不登校だった子の8割以上は進学か就職をしていることがわかりますね。

不登校を経験しても、8割前後の子がしっかり進学・就職できているので、進学・進路を心配されていた方はまず焦る気持ちを落ち着けて頂けたらと思います。

坂下
坂下
最新の平成18年(結果公表は23年)の文部科学省の「不登校の実態調査」はこちらの文科省のホームページからご覧いただけます。

進学率は年々増加

不登校から進学する割合

文部科学省の「不登校の実態調査」は今までに2回、平成10年(調査結果公表は13年)と平成23年(調査結果公表は26年)で行われています。

この2回の調査結果を見ると、不登校の子たちの進学率も就職率も、平成10年より平成23年の方が上がっていることがわかります。

不登校経験者の進路の変化(平成10年→23年の変化)
  • 高校中退率が37.9%から14.0%に低下
  • 大学・短大・高専への就学割合が8.5%から22.8%に増加
  • 就学も就業もしていない人数が22.8%から18.1%に減少

このデータから、この13年の間に不登校の子が社会復帰しやすい社会環境が年々少しずつ整ってきているとも捉えられますね。

高校の勉強の遅れはそれほど気にしなくていい

高校の授業の遅れはそれほど気にしなくて良い

時々親御さんから「高校の授業についていけないことは、就職に影響しますか?」と質問頂くことも多いのですが、大学受験するなら受験勉強は必要なものの、それ以外は高校の勉強の習熟度はそれほど気にしなくて良いのではと個人的に思います。

と言うのも、営業職や事務職、販売など、世間の多くの仕事では高校の授業で学んだ知識をほとんど使わないからです。これを読んでいる親御さん自身も高校の勉強を振り返ってみてください…覚えていないことが多すぎませんか?(笑)

つまり、高校の授業で学んだことのほとんどは大人になってから使っていないので、無理して勉強しなくてもいいのではと思います。

一方で、中学レベルの学力は重要です。大卒向けの就職活動ではSPI適性検査で中学レベル程度の学力を見られますし、中学レベルの文章読解や語彙、計算や論理などの思考力は就職後の仕事でも生きるからです。

そのため、もし学力を心配されるなら中学レベルの基礎力が大事だと感じています。とは言え、大学進学するなら相応の対策が必要ですので、受験する大学に合わせた教科・内容を勉強しましょう。

高校で不登校になったその後の回復例

不登校の高校生

高校で不登校になった生徒が、その後どのように生活しているのか、例が知りたい方もいらっしゃると思います。

そこで今回は、不登校男子の母親であるきのこさんから頂いたお手紙をご紹介します。

中2で不登校になり、家庭教育推進協会の賛助機関である復学支援機関(FHE)で復学させて頂いた長男が、春から社会人になります。

1月からは内定を頂いた企業にアルバイトとしてお世話になりながら、3月に専門学校を卒業しました。

 

「ただいま!」と、スーツ姿の長男に「おかえり!」と微笑むと、はにかんだ笑顔をくれます。

食卓で主人と大笑いしながら話す姿。もうそんな笑顔を見ることはできないかもしれないと、思った頃もありました。

 

高校生になり、充実した日々を送る長男を見ていると、不登校だった事が嘘のようでした。でも、せっかく積み上げた日々が、油断によって簡単に崩れるのだとわかったのは、長男が高2の夏休み明けでした。

 

自宅の建て替えで引っ越しをし、そこから夏休みの補習もサボりだした長男に嫌な空気を感じながらも、大丈夫だと過信し目を背けていました。

 

長男は始業式に学校を休み、その事に対して、父親対応をしてもらった時に、長男の左腕に走る数本の赤い線に目がいきました。

まさか、リストカットをするなんて…驚きと悲しみがまだあけていないその夜には、私に見えるようにさりげなく伸ばした腕いっぱいに、切りつけた痕がありました。

翌日からは、登校しないで部屋に籠りっぱなしになり、食事も1日に1食、食べるかどうかで、日に日に痩せていきました。

何度も訪問カウンセラーの先生が足を運んでくださり、長男が先生に心を開いていることだけが、どれだけ私の心の支えになったでしょうか。

 

やがて訪問の先生方の支えで、登校できるようになった長男でしたが、頑張っては休むを繰り返します。

共感して話を聴く場面も微妙にずれていき、体調不良を訴えた時に親が醸し出す特別感を長男は感じとって、よりおかしな行動をし、どんどん深みにはまっていくようでした。

 

学校の先生は情報を共有してくださり、繰り返すお願いにも根気よく付き合ってくださいます。クラスにただひとりいる親友も、何度も自宅に電話をくれ、登校したらずっと長男のそばにいてくれたそうです。

愛情を注ぎ心配してくれる祖父母。

何があっても、どれだけ休んで約束をやぶっても、会いにきてくださる訪問カウンセラーのN先生。

 

たくさんの人の思いを、長男は何度も裏切り、やがて、心が壊れたから、やる気がでる薬がほしい。精神病院に行きたい。と、訴えるようになりました。

長男に病院は必要ないと決断し、その事はそれから続くメンタル面との戦いの軸になりました。

補習を受ける事を拒否し進級できるかどうかのギリギリまでいきましたが、訪問カウンセラーN先生の支えで補習を受ける事ができました。

 

2年の3学期には、別室登校させてほしいと言ってきました。

代表の藤本先生のアドバイスで3年に教室に戻る事を条件に別室を受け入れました。
甘い環境の別室で、長男の中にも甘えが生まれます。親に、自分に都合のいいように甘えを訴えてくる度に、ぶれない親の本気度を長男にみせることになります。

 

1度壊れた親子関係はなかなか戻らず、主人の言葉も届かなくなっていました。

テストを休むこともあり、進級できるかどうかまでいき、私にとったらどの瞬間もギリギリの勝負でした。

主人の言葉はいつか届く。

藤本先生が作ってくださった軸をぶらさないように、主人に繋ぐ土台を作るまで、負けるな!と自分に言い聞かせながら、対応を重ねました。

 

それでも、おかしな行動を繰り返す長男。教室に戻す為に、藤本先生が会いにきてくださいました。

部屋に籠ったきり、食事も一緒にとらない。買ったばかりのテレビを壊して捨ててくる。濡らしたタオルを部屋に敷き詰めて、変な潔癖症を出す。

部屋に隠すサラダ油に、燃やし焦げた紙を入れたクローゼット。

先生が長男にひとつひとつ確認しながら、心に語りかけてくださいます。

たくさんの人に助けてもらい不登校を脱け出した。高校生になり、頑張り輝いていた頃の自分はどこにいったか?

あの頃の自分は今の自分を見たらなんて言うか?過去の自分、現在の自分と向き合い、長男は泣き出しました。

リストカットについても、その傷が残っていたら10年後の自分はどう思うか?
今度は未来の自分と向き合わせます。

 

主人も過去は、同居する両親に甘えの残る次男坊でしたが、藤本先生に出会って対応を教えて頂くうちに、子を愛し、子を叱る事ができる父親になっていました。

支えてくれた人を裏切るな!

長男への思いを拳に込めて、愛情を伝えました。

 

新学期、教室に戻った事から、また休み、鬱状態にもなりましたが再度のコーチングで土台を固めていってくださいます。そしてまた家族療法で積み重ねる日々。

少しずつ、ずれていた歯車が噛み合いだし、動き出した長男は自分で専門学校を決めてきました。

 

高校を卒業後に志を新たに通いだした専門学校でも、立てた目標に追い付くことができず、自律神経失調症、過敏性腸症候群、病名がついた事でまた甘えがでて、休みだします。

親にできたのは、普段のプラスのストロークを大切にし、毎日の会話を振り返り、対応を重ねる事でした。

目標に追い付けない苦しみも、ターニングポイントでの目標変更でうまくシフトチェンジできました。

小さな事に口を出さない父の立場はあがり、ここだという時のやりとりで愛情を感じた事からか、父の言葉が届くようになりました。

 

就活ができず後1年行かせてほしいと言った時も、その理由を聞いた父が気持ちを受け入れてくれ、自分を信じ、応援してくれていると感じたことからか、頑張って資格を取得し就活も乗りきれました。

 

何度裏切っても、信じ支えてくれたまわりの人たちへの感謝の気持ちは、長男の就職が決まった時にくれた親への「ありがとう」の言葉から溢れでていました。

 

思春期の子は、何度裏切っても、親が信じて見捨てない事で、成長する。
藤本先生から教えて頂き、その言葉を支えに苦しい時期を乗りきる事ができました。

 

もし今、辛い人がいるのなら、家庭教育をあきらめないで積み重ねてほしいと願います。

その先にある、子どもさんの未来を信じて。

訪問の先生方は何度も裏切る子を、油断で土台を崩してしまった親を責める事なく、信じて見捨てないでいてくださいました。

親も成長する事ができたと、訪問の先生方に思って頂けるよう今後も家庭教育を学び続けていきたいと思っています。

坂下
坂下
きのこさん親子も「家庭教育」をきっかけに不登校を乗り越えることができました。家庭教育については、次項で詳しく説明しますね。

高校で不登校になったときに大切なこと

大学進学や就職、そして成人…色々なものを控えた高校時代で不登校になると、お子さんだけでなく、親御さんもとても不安や焦りを感じてしまうかと思います。

そんなとき、意識して頂きたいポイントについてお伝えさせて頂きます。

親が焦らない

不登校にならない母子関係

親御さん自身が焦らないというのもとても大事です。

親が焦ってしまうのはお子さんへの愛情故なので素晴らしいことなのですが、ここで一度「問題所有の原則」を思い出してください。

坂下
坂下
協会の支援を受けている方は「問題所有の原則」は何度も勉強されているかと思います!

不登校と言うのは、あくまでお子さん自身の問題です。親が干渉すべきではないはずなのですが、心配するあまりに親の方が焦ってしまうのです。

「この子の不登校をなんとかしなければ」と焦るのは、子ども思いだからこそ。しかし子ども思いである反面、お子さんを信頼しきれておらず過保護・過干渉気味であるとも言えます。親が過保護・過干渉気味だと、子どもも周囲の人に依存しやすくなってしまうのです。

そのため問題所有の原則に則って、まずはお子さん自身に考え、行動するよう見守る力をつけましょう。

そのうえで、どうしても不安やうまく行かないことが多ければ、遠慮なく専門家に相談してください。

親が家庭教育を学ぶ

家庭教育推進協会のお話会・懇親会

高校生のお子さんが不登校になったとき、親が家庭教育を学ぶことが非常に重要です。

家庭教育…家族の触れ合いを通して、子どもが親から学ぶこと。基本的な生活習慣や生活能力、人に対する信頼感、豊かな情操、他人に対する思いやり、基本的倫理観、自尊心や自立心、社会的なマナーなど。

家庭教育は、すべての教育の出発点です。学校では教えてもらえないようなことも、家庭教育で子どもは親から学びます。

しかし、何かのボタンの掛け違いで親子間に亀裂が入ってしまっていたり、過保護・過干渉だったり、お子さんが精神的に不安定だったりして家庭教育がうまく機能していないと、それが「不登校」という形で現れると考えています。

親が家庭教育を学び、日々の声掛けや子どもの観察方法、叱り方やフォローの仕方など…様々なケースでの対応方法を学ぶことで、お子さんは少しずつ自立し、自己効力感が育まれて、大きく成長していけるようになります。

そのため、まずは親御さんが家庭教育を学ぶことが重要です。

「高校で不登校になったその後の実話。家庭教育が子どもを変える」まとめ

不登校の高校生のその後

現在は右肩上がりに不登校生徒数が増えており、不登校自体は珍しいものではなくなっていますよね。そして、年々不登校の子への社会的なサポートも増えてきて、不登校になっても色々な進路選択が出来るようになっていますし、それが進学率として数字に表れています。

そのため、不登校だからといって進路を諦める必要は全くないのです。

しかし、大学進学や就職後の子どもの将来を考えたとき、怖い上司や合わない仕事内容など、色々な壁にぶつかることもあるでしょう。そのときに生きるのが家庭教育なのです。

  • 何でもかんでも親に甘えない、頼らない
  • 仕事内容が難しく感じても、すぐに諦めない
  • 合わない人ともうまく折り合いをつけてやっていく
  • 嫌なことがあっても対処法を自分で考えたり、うまく受け流す など

上記のような力をつけるのが、家庭教育なのです。

お子さんが不登校になったとき、無理やり登校させることはできるかもしれませんがそれでは一時しのぎです。無理な登校は、何かをきっかけにまた不登校になる可能性もあります。

だからこそ、親が家庭教育を学び、自宅でのコミュニケーションを日々アップデートすることが重要です。そうやって家庭教育でお子さんの自己効力感を高め、自立を促すことで、高校を卒業したその後も仕事や人間関係で躓いても自分で再起する力を育んでいきましょう。

ABOUT ME
坂下
カウンセラーの坂下です。お子さんのためなら遠方でも出張カウンセリングに伺います!