家庭教育推進協会では、家庭教育相談士の育成にも力を入れています。
家庭教育相談士とは、家庭内でのお子さんへの対応方法などを親が気軽に相談できる専門家。この子育てしにくい現代日本社会で、ときには一緒に悩んだり、一緒にお子さんの成長を喜んだりしながら、二人三脚で悩みや不安を抱える親御さんをサポートします。
家庭教育とは
家庭教育推進協会の大事にしている考え方は、家庭教育を通じて子育てや家庭内を円滑にするということ。
一言で「家庭教育」といっても抽象的でわかりにくいと思いますので、以下で詳しくご説明していきますね。
家庭教育の定義
そもそも家庭教育とは、親が家庭内で子どもに対し、言葉や生活習慣、コミュニケーションなど、生きていくうえで必要なソーシャルスキルを身につける援助をすることを言います。
平成18年の教育基本法改正時には家庭教育に関する条文が設けられましたが、国連でも「児童の権利に関する条約」の第18条で定義されているように、日本だけではなく国際社会としても家庭教育は重要視されています。
子育て責任が父母にのしかかる現代日本
実は昔と比較して、現在の日本では子育てにおける親の責任が大きくなっています。
昔は地域社会全体で子育てを行っており、子どもの教育の責任は地域や国にもあるとされてきましたが、個性や多様性が重要視される中で父母に子育ての全権があるようになってきたのです。
教育基本法でも「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」とありますが、都市化や核家族化、共働きの増加などにより、子どもの教育における父母の役割・責任が大きくなってきたのです。
教育基本法第10条
(家庭教育)第1項 父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。
第2項 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。
出典:文部科学省「教育基本法」
子育てを自由に行えることは良いことです。小学校通学にしても、昔は小学校に通うしか選択肢がなかったものが、現在はフリースクールや自宅学習など様々な選択肢がありますよね。子どもの特性等を踏まえて親は色々な選択ができるようになりました。
しかし自由に子育てするということは、責任と隣り合わせということでもあるのです。昔と比べて地域社会や親戚との繋がりも希薄になっているため、子どもに何かあっても対処できるのは親だけという家庭も少なくないはずです。
加えて共働きや祖父母の育児サポートなしなどの都市化の影響もあり、現代日本ではどんどん子育てや家庭教育がしにくくなって親が家庭教育で孤立化してきているとも言えるのです。
現代日本の家庭教育の問題点
都市化が進み、子どもの家庭教育を担うのがほぼ父母のみになってしまうと、子どもの成長や価値観の形成に与える親の影響が非常に大きくなります。そのため、親が家庭教育をうまく出来なかったりその子に合った方法ではなかったりすると、子どもの成長に大きな影響を与えてしまうのです。
また、昔は地域社会から子育て方法を見聞きして自然と学ぶ機会が多くありましたが、現代では受験競争などで子育て方法や家庭教育を学ぶ機会や余裕がないまま親になるケースも多いと思います。
自治体でも「沐浴講習」や「離乳食教室」のようなベビー教室は多くありますが、幼児以降に子どもの自立を促したり、児童心理を学べる講座は少ないですよね。そのため、家庭教育を親が意識的に学ぶことが重要になってきたのです。
家庭教育相談士の役割
世界的に家庭教育が重要視されていること、親が意識的に家庭教育を学ぶことが大切と述べさせて頂きましたが、では現代日本において家庭教育相談士はどのようなことができるのでしょうか。
家庭教育相談士の役割についてご説明していきますね。
「家庭教育」の専門家
現在の日本では心理士や教育関係の様々な資格があるものの、家庭教育にはフォーカスはされていません。しかし、子どもが初めて所属する場所は家庭であり、心身ともに成長し自我を形成するのに最も重要なのは家庭とも言えるため、家庭教育を専門にする相談役も必要だと考えています。
家庭教育相談士は、親の家庭内対応方法や家庭内コミュニケーション、子どもの心理の解釈方法など、家庭教育を専門的に学びます。そして、その子その子の個別のケースで実際にどう対応すべきかまでを落とし込んで検討します。
子育て中の親をサポート
子育ては幸せを感じられる尊い行為である一方で、ときに苦しく難しさを感じることもありますよね。
前述のとおり、現代日本の親は子育ての責任が増える一方、共働きなどで時間的にも精神的にも余裕がなく、祖父母や地域社会のサポートも得られないまま必死に孤軍奮闘されている方が多いです。このようなときに不登校や家庭内暴力などが起きた場合、子どももサポートが必要ですが、親自身もサポートが必要なのです。
育児書などでは「穏やかに育児しましょう」「たくさん甘えさせてあげましょう」などという言葉を多く見かけますが、実際に常に穏やかに子どもと接することが出来る親はどのくらいいるでしょうか。正論や理想論を押し付けられるだけではどこかに歪みが出たり解決しないことも多いですし、否定された気がして疲弊してしまいます。
理想論やきれいごとだけではないリアルな子育てをわかったうえで、親御さんの悩みや苦しみも分かち合い、実際にどうアクションしていくかを親身に検討し、お子さんの成長を一緒に喜べる二人三脚型のサポートを家庭教育相談士は行っていきます。
行政でも先生でもないからこそできる支援
家庭教育を支援する仕組みは行政や学校側にもあります。
しかし行政の相談機関は縦割りで対応が遅かったり、学校のスクールカウンセラーも人手不足でカウンセリングの順番が回ってくるまでに数週間もかかることもあります。一方で家庭教育相談士は行政や学校関係者ではないからこそ、密な連絡やきめ細やかな対応が出来るのです。
例えば、単に家庭教育方法をレクチャーするだけではなく、「なぜこのような対応を今すべきなのか」という根拠まで共有します。日々の子どもへのちょっとした対応方法でも密に擦り合わせするのを繰り返すことで、いつしか「こういう場合は、こう対応しよう」と親自身で考えて実践できる力がつくのです。
何かあるたびに親御さんご自身で考え行動できることで、日々の迷いや不安も軽減され、育児に対する自信がつき、お子さんにも余裕をもって対応できるようになります。
家庭教育相談士取得がおすすめな方
子育て中の親目線で、きめ細やかに親身に相談に乗る家庭教育相談士。行政でも先生でもない、親と専門家の間のような存在だからこそ、出来る支援があります。
家庭教育相談士には、どのような方が向いているのでしょうか。以下で詳しくお伝えしていきますね。
自分の育児に自信を持ちたい方
家庭教育相談士の資格取得は、子育てに自信を持ちたい親御さんにおすすめです。
日々子育てをしていると、迷ったり疑問に思うことが多々起こりますよね。
- 「部屋を片付けてもらうにはどうしたらいい?」
- 「家庭ののルールを守ってほしいのにうまく行かない」
- 「最近やたら母親に甘えてくるけど、甘えさせるべき?厳しくするべき?」など
このような日々の悩みも、家庭教育相談士の養成講座やテキスト、セミナー等で知識と理論をしっかりと学ぶと解決の糸口が見えてきます。
言葉かけのしかたや共感方法など実践的なものも多いので、日々の生活に役立つことでしょう。
学校関係者・教育関連のお仕事の方
家庭教育相談士の資格は、学校関係者や教育関連のお仕事をされている方にもおすすめです。
日々子どもたちと接していると、性格も考え方も特性もバラバラでどう対応するのが良いのかがわからなくなることもあるかと思います。そのようなとき、家庭教育相談士で学んでおくと、対応の引き出しを増やせるかもしれません。
また、児童心理学や発達心理学などの基礎を学びなおしたい方にもおすすめです。子どもとのコミュニケーションを取るうえで重要な心理学理論をピックアップしているので、仕事に生かしやすい理論を効率的に学ぶことができます。
家庭教育相談士になるには
家庭教育推進協会が認定を行っている、家庭教育相談士。
ここからは、家庭教育相談士になる方法についてお伝えしていきますね。
【STEP1】勉強する
まずは家庭教育について学んでいきましょう。
家庭教育推進協会では、効率よく学べる「家庭教育相談士養成講座」を年に1~2回程度実施しています。コロナ禍以前は関東・関西の会場で行っていましたが、コロナ禍以降はオンラインでの開催となっています。
今後の開催については家庭教育推進協会ホームページなどでご確認ください。
【STEP2】WEB受験
家庭教育相談士試験は、WEB受験が可能です。PC環境などをチェックしたうえで、ご自宅等から受験してください。
WEB試験の受験期間は1週間ほどあるので、お仕事をされてる人でも余裕を持って受けられます。
【STEP3】合格・登録
家庭教育相談士に合格されると、家庭教育推進協会の賛助会員にもご登録頂きます。
賛助会員に届く会報などで、最新の不登校関連情報などを知ることができます。
【STEP4】家庭教育相談士として活動
家庭教育相談士に合格・登録された後は、家庭教育相談士として活動できます。
家庭教育推進協会の懇親会やお話会などのイベントに参加頂き、子育てに悩んでいる親御さんのお話を聞いたり、相談に乗ったり…親御さんの悩みを聞く経験が増えると、家庭教育相談士のテキストで学んだことも一層理解が深まると思います。
まとめ
実は家庭教育相談士は、子育てを経験したお母さんが多いです。自らも過去に子育てで悩み、家庭教育を学びながら試行錯誤して乗り越えた経験を活かしているのです。
子育てに悩む親にとって、臨床心理士などの高度な資格を持つ人のカウンセリングは安心するでしょう。しかし、同じ子どもをもつ親同士の近い目線で、子育ての辛さや難しさも共感でき、時には愚痴を言ったり弱音を吐いたりしながらも、一緒に考え一緒に子どもの成長を喜んで、二人三脚で歩む存在も心強いと思います。
育児につまずいた経験も、同じように悩んでいる人にとっては貴重な体験談ですし、苦労してきたからこそ誰かの支えになれることがきっとあります。家庭教育を学んで、その知識を生かしたいと思われる方はぜひ家庭教育相談士の受験を検討してみてくださいね。